Video Distribution
GGX Finance Summit 2024は10月15日に終了いたしました。本会議の映像は下記よりご覧いただけます。
GGX Finance Summit 2024の概要
- 日時:2024年10月15日(火曜日)10:00~17:00
- 開催方法:ハイブリッド開催(現地/オンライン)
- 主催:経済産業省
- 共催:WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)、TCFDコンソーシアム、GX推進機構
プログラム
開催概要
経済産業省は、10月6日(日曜日)から開催した「東京GXウィーク」及び「Japan Weeks」の一環として、10月15日(火曜日)、トランジション・ファイナンスや産業の脱炭素化等に関する更なる議論の発展に向け、官・民・金の相互連携を推進し、各枠組みで排出削減と経済成長を両立するための国際的なルールメイクをリードするため、「GGX(Global GX)Finance Summit」を開催しました。
本会合では、(1)GX市場の拡大に向けて、(2)GXスタートアップエコシステムの構築、(3)トランジション・ファイナンスの今後の展望、(4)移行計画の策定の4つのセッションが行われ、それぞれのテーマについて国内外の有識者から提言をいただいたほか、パネルディスカッションでGXの実現に向けて今後必要な取組について議論を行いました。
議論の内容
開会挨拶
龍崎 孝嗣(経済産業省 GXグループ長)
- 昨年策定されたGX推進戦略の鍵は、GX経済移行債発行後のカーボンプライシング導入によって、経済成長と排出削減の両立を可能にする「成長志向型カーボンプライシング構想」であり、特にHard to abateセクターのトランジションのための、膨大な資金需要への対応を目的とした「トランジション・ファイナンス」の推進が必要。
- GX実現の上では、需要喚起に向けた環境整備が必要であるとともに、国際連携も重要であり、グローバル・ルールの確立や、トランジション・ファイナンス推進についての積極的な議論も期待される。
小堀 秀毅 氏(一般社団法人 日本経済団体連合会 副会長)
- 経団連では、2022年に日本政府に対して提言するなど、積極的にGXに関する意見を発信。日本政府が掲げる「官民合わせて10年間で150兆円規模の投資」を実現するため、①情報開示に関するさらなる裾野拡大やエンゲージメントの促進、②日本政府が公開しているロードマップやガイダンスを活用することによる企業のトランジションへの信頼性と実効性向上、③積極的な削減貢献量の評価、そして④AZECを始めとするイニシアティブを通じた各国連携による世界規模でのルール形成の4項目に取組み、民間資金の動員に向けた環境を整える必要がある。
Mary L. Schapiro 氏(Vice Chair, Glasgow Financial Alliance for Net Zero(GFANZ))
- 日本の課題である炭素集約型経済の脱炭素化と、移行による企業、労働者、社会へのインパクトの管理は、世界各国に共通する課題。一方で、技術の進歩や、政策によるインパクト、移行の経済性の変化といった希望の兆しもある。金融セクターや実体経済企業は、移行に関連した成長機会を見出しつつある。
- 企業は、ISSB基準等を適用した気候変動と移行に関するリスクと機会の評価、GFANZ枠組み等に基づいた高品質で信頼性のある移行計画の策定と公表、及び融投資先企業とのエンゲージメントの強化に取り組むことが望ましい。金融機関、実体経済企業、政策立案者が手を組むことで、地球温暖化の抑制と、最も壊滅的な結果の回避につながるだろう。
Session 1:GX市場の拡大に向けて
パネルディスカッション1
- 排出削減が困難なセクターが世界の排出量に占める割合は高く、その脱炭素化は極めて重要であるが、脱炭素化に際してファイナンスや技術の課題に直面している。産業部門の脱炭素化を促進するためには、脱炭素投資が行われた製品が投入されるGX市場の創出、すなわち需要の喚起が必要である。
- 需要の喚起には、グリーンプレミアムの適切な評価が必要である。経済産業省の研究会では、製造段階の排出削減を定量化する「削減実績量」のコンセプトを検討し、ガイドラインを作成している。こうした指標をグローバル基準として確立し認知度を高めることが、GX市場拡大の一つの手段であることが提起された。
- 脱炭素化プロジェクトを実行に移すために、需要がコミットされることも重要である。世界経済フォーラムはFirst Movers Coalitionを通じて需要を明確化してきており、また、WBCSDは9月にCenter for Decarbonization Demand Accelerationを立ち上げその促進に取り組んでいる。
- 脱炭素化投資の拡大にはGX市場の創出が不可欠であり、ネットゼロ達成には、金融機関と産業、供給側と需要側との協力が重要である。今後、さらにインセンティブベースの視点で削減価値を評価する指標である削減貢献量やコンセプト段階である削減実績量に関する議論を続けたい。
Session 2:GXスタートアップエコシステムの構築
基調講演
菊川 人吾(経済産業省 イノベーション・環境局長)
- 日本国内のスタートアップ・エコシステムは大変革を遂げつつあり、スタートアップの社数や資金調達額等は着実に伸びている。日本はGX分野の関連技術の蓄積もあり、GX分野のスタートアップは大きく伸びるポテンシャルを秘めているが、国際的には存在感は低く、大規模な投資と長いリードタイム、国際的な政策動向に依存する高いビジネスリスク、我が国の発展途上な資金調達環境と、課題は山積している。この状況を打破するためGX分野のディープテック・スタートアップに対して3000億円規模の予算により、技術シーズの研究開発支援から社会実装を見据えた量産・スケールの事業開発支援まで一貫した支援、海外の事業者との共同研究開発の支援を行う。
Katherine Elizabeth Monahan 氏(Deputy Chief of Mission, Embassy of the United States of America)
- 日本のGX推進法と米国のインフレ抑制法は、政府が環境整備を担い、民間セクターが主導権を握るという点で共通している。クリーンエネルギーへの移行は、首脳レベルの優先事項となっており、日本と米国は、政府の政策、最先端の研究、そして将来を見据えたビジネスを通じて、移行を世界的にリードする立場にある。日米協力は、未来のための進展と繁栄に関する共通のビジョンを促進するグローバル・パートナーシップであり、イノベーションを推進し、産業基盤を強化し、未来の戦略的新興産業を育成することを目指している。
パネルディスカッション2
- GXを実現する革新的技術の原動力となるのがGXスタートアップ。脱炭素の実現は今後のイノベーション開発・商業化に大きく依存しており、GXスタートアップへの支援が欠かせない。
- 科学的なアドバンテージを有することはGXスタートアップにとっての成長機会である。
- GX分野では、技術の成熟や、企業が安定的に収益を上げられるようになるまで、時間がかかる。そのため、十分な規模及び時間的余裕のある資金を通じて、R&D段階とともに商業化へのスケールアップを支援することが重要。
- 政府は脱炭素技術への需要が継続して存在することを担保する役割がある。他方で、公的資金が市場を歪めることがあってはならず、スタートアップのエコシステムが健全に育成されるよう注意が必要。
- GXスタートアップは、日本国内の市場に閉じることなく、より大きなグローバル市場も目指していくべき。
Session 3:トランジション・ファイナンスの今後の展望
基調講演
宮園 雅敬 氏(年金積立金管理運用独立行政法人 理事長)
- GPIFは、気候変動リスクを踏まえ、TCFD提言に沿った気候関連財務情報の開示やGX経済移行債への投資を行っている。
- 2023年は、グリーニアムと、第三者認証、情報開示、インパクトとの関係について分析を実施し、第三者認証や資金使途の開示を行う場合はグリーニアムが発生する傾向が確認された。
- GX実現のためには、よりインパクトの大きいプロジェクトが、より低コストで資金調達できることが必要である。GPIFの投資として、被保険者の利益を追求する上で考慮すべきインパクトは何かについて検討を続ける観点からも、インパクトに関する情報開示の質の向上に期待。今後も、ESG情報の開示拡充に自ら積極的に取り組み、様々な問題提起を行うことで、市場全体の持続可能性向上に貢献したい。
福留 朗裕 氏(一般社団法人 全国銀行協会 会長)
- 昨年、GX推進法が成立し、今年2月にはGX経済移行債の発行、同7月にはGX推進機構が業務を開始する等、GXをビジネスとして社会実装する段階に入っている。
- 銀行界全体としてトランジション・ファイナンス案件を進めている段階にあるが、更なる推進には、サプライチェーン、ステークホルダーが一体となりトランジションへの理解を深め、取組を推進することが何よりも重要である。
- 当行(三井住友銀行)では、トランジション・ファイナンスを進めていく上での課題や案件事例等を取りまとめた「Transition Finance Scorebook」を近日公表し、今後のトランジション・ファイナンスの発展に役立てたいと考えている。
パネルディスカッション3
- トランジション・ファイナンスの概念や重要性については、この数年間で国際的な理解が深まっている。国際的にも各国・地域でも様々なツールやガイダンスが公表されている。
- 日本のクライメート・トランジション・ボンドはポジティブに受け入れられており、トランジション・ファイナンスの認識の向上に一役買っていると言える。一方で、個別の事例では定義や対象についてまだ議論の余地がある。
- 移行計画には企業、セクター全体、国(政府)の3層がある。政府が企業や産業の移行を支援しコミットすることで、移行計画の信頼性が高まる。
- トランジション・ファイナンス普及における政府の重要な役割は、支援すべきセクターへの予算措置による経済全体の移行を促すことや、市場・投資家に対する教育・認識向上を率先することである。
- 全体的なトランジション・ファイナンスの信頼性を高めることが重要であり、開示とレポーティングが必要である。トランジション・ファイナンスが長期的に排出削減につながっているという実績を示すことで、信頼が得られる。
- 多くのトランジション・ファイナンス関連の枠組みやパスウェイの判断の信頼性の枠組みは、多くの場合、前提条件として、1.5℃目標がベースになっているが、新興国にとって難しい場合もある。このギャップをどう埋めるかが重要であり、どのように信頼のおけるツールで埋めることができるか検討が必要。
- 日本は、アジアの金融市場でトランジションのコンセプトを根付かせる活動を行うため、アジアGXコンソーシアムを設立。実例を示し、これまで作成してきたものを活用して新興国の文脈における信頼のおけるトランジション・ファイナンスの枠組みを作り実行に移していく。
Session 4:トランジション・ファイナンスの今後の展望
基調講演
伊藤 邦雄 氏(TCFDコンソーシアム 会長)
- TCFDの活動が終了するなど、TCFDとTCFDコンソーシアムは大きな転換点を迎えているが、GXの目標実現に向けて気候関連開示の重要性は益々高まると考えられている。
- TCFDコンソーシアムでは、TCFDガイダンスやグリーン投資ガイダンスを策定・改訂してきた。今年8月には移行計画ガイドブックを発行するなど、TCFDに参画する日本企業の気候関連開示に関する議論を続けている。今後GX推進機構も運営にも携わり、よりファイナンスにと結びつけた活動も検討していく。
パネルディスカッション4
- 気候関連情報開示の制度化・標準化が進み、開示に取り組む企業も急増。情報開示を通じて企業の「あるべき姿」を社内外で議論することは、脱炭素に向けた取り組みを前進させる効果がある。
- 企業は、事業成長・利益創出と持続可能性の両立をステークホルダーに納得してもらえるよう、移行戦略を策定し、発信することが求められている。
- 社会全体のトランジションには他社との協働が不可欠。野心的目標を含む移行計画を開示することで、社外からソリューションのヒントを得ることにも繋がる。
- 投資家は、移行計画を通じて企業の気候変動への取組に対する理解を深めることができる。企業と双方向の対話を積み重ねることで開示が改善し、脱炭素に向けた取り組みにもつながる。
- 今後は国レベルでの移行計画も重要。日本政府のGX政策は国際的な模範となる可能性がある。
閉会挨拶
重竹 尚基 氏(GX推進機構 専務理事)
- 本サミットにおいて、GXにおける「フェーズ・シフト」の概念が根本的なメッセージであった。
- セッション1では、GXの需要側にも焦点を当てるべきであることや、製品の排出削減の可視化には「削減」が非常に重要であることが述べられた。次のセッション2では、スタートアップがGX分野における革新的ソリューションの大きな可能性を有している点を示唆した。セッション3では、「一つの目標、多様な道筋」という概念が掲げられ、規律をもってトランジション・ファイナンスを実現する必要があることが述べられた。そしてセッション4では、移行計画に向けての取組が着実に進んだことが示され、移行計画は投資決定を導く戦略でありGX実現には必要不可欠であることが示された。
- 以上の内容からも、本サミットはGGXの新時代の始まりであることは明らかであり、今後もGX推進機構はグリーン・トランスフォーメーションを加速するため最善を尽くす。